盆暗の学習記録

データサイエンスを中心として,日々学んだことの備忘録としていく予定です。初心者であり独学なので内容には誤りが含まれる可能性が大いにあります。

科学史についてのメモ

諸学問について全体的に興味を持っていたため,「科学」を知ることができそうなこの本を買いました。

この本は,序盤に

  • 「科学とはなにか」という問いに答えるには,哲学だけでなく,歴史学社会学も含めた多面的な考察が要求される
  • ゆえに本書では,(1)科学史,(2)科学哲学,(3)科学社会学,の三本を柱とした広い意味での科学論を述べる

といったことが書かれており,実際にこれら(1)~(3)の構成になっているため,ここでのメモも3つに分けていきます。

今回は,科学史について,この本やインターネット上の資料を基にメモしていきます。

1. 古代――アリストテレス的自然観

コスモロジー

(1)古代天文学

古代の天文学理論(セントラル・ドグマ)

  1. 天上と地上の根本的区別
    • エンペドクレスの「四元素説:万物は地(土),水,火,風(空気)から構成される。四元素は「愛」と「憎」によって結合と分離を繰り返し,自然現象を現出させる
    • 月の天球を境にして,天上界と地上界は分かれる。地上界は四元素からなるが,天上界はエーテルという第五元素で形作られている
  2. 天体の動力としての天球の存在
    • 星が回転するのではなく,天球(透明な球殻)が回転し,天球に付着する星も地球の周りを回る
  3. 天体の自然運動としての一様な円運動

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セントラル・ドグマでは説明できない「変則事象」

  1. 地球と惑星(水星,金星,火星,木星土星,太陽,月)との距離が変化している
  2. 惑星の不規則な運動

古代天文学の難問(アポリア)(上記の2つの問題)への取り組み

  1. エウドクソスの「同心天球説:異なる角度の回転軸を持つ複数個の天球
    • しかし,天球なので「地球と惑星の距離が変化している」ということを説明できない

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  1. アポロニオス・ヒッパルコスらによる「周転円説」(プトレマイオスの天動説
    • 「離心円(地球から離れたところに軸がある円軌道)」「周転円(地球を中心とする第一次円軌道の円周上の一点を中心とする小円)」「エカント(離心円上の点,惑星はエカントに対して一定の角速度で運動する)」などの概念を導入
    • 惑星の「一様な円運動」というセントラル・ドグマを逸脱することなく惑星の不規則運動を説明できた
    • 当時の観測データとも高い精度で一致しており,非常に合理的な理論だった
    • その後は周転円説の理論の精緻化が進められ,コペルニクスの時代(16世紀)には周転円の数は80個を超えるほど複雑化した
    • 地球から見た惑星の運動が「一様な円運動」というアリストテレス的自然観のドグマを外れたところが唯一の欠点

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(2) 古代自然学の運動論

  • 自然学の中核は運動論
  • 古代ギリシアの「運動(キネーシス)」とは,石の落下から植物の生長までを含む広範な概念
    • 「可能態(デュナミス)」から「現実態(エネルゲイア)」への移行と捉えられた
    • 例えば,種子(可能態)が樹木(現実態)になる,というように,可能性の実現として考える

古代運動論のセントラル・ドグマ

  1. 自然運動の原因は自然的傾向

    • アルケー(根源物質)である四元素(地・水・火・風)は本来あるべき「自然な場所(natural place)」があり,そこに向かう自然的傾向がある
      • 地上界の中で,上から火>風>水>地の順になっている。火が月の天球近くで,地は地球の中心
      • 地上の物体の自然運動は,自然な場所に戻ろうとする「自然的傾向」によって生ずるものである。物体の自発的運動であり,可能性が現実化される過程である。
  2. 強制運動の原因(外部からの力)は接触による近接作用(押す・引く)

  3. 物体の速度は動力に比例し,媒質の抵抗に反比例する

    • 重さの違う物体を落下させた場合,重いほうが外力が強いため,重い物体ほど早くなる

セントラル・ドグマでは説明できない「変則事象」

  1. 投射運動:投射された物体が直接的な接触作用を離れても運動を続ける現象を説明できない

    • この問題への古代運動論の答え
      • プラトンの「まわり押し理論」:投射されたボールは周りの空気を押し分けながら進み,ボールが進んだ後ろの空気は希薄になるため,「自然は真空を嫌う」ことから押し分けられた空気が真空状態になった場所に急激に回り込むため,その動力がボールを更に前へ進める。(空気が直接的な近接作用を与えるためボールは飛び続ける)
  2. 落体運動の加速度:自由落下において物体の速度が次第に増していく現象

    • アリストテレスによれば,「落体の速度は重さ(動力)に比例する」ため落下速度は一定になるはずだが,現実はそうならない
    • この問題への古代運動論の答え:
      1. 物体が落下するにつれて,それに抵抗する空気の層が薄くなるのだから,抵抗が減少するにつれて落下速度が増加する。
      2. 故郷に近づくと足取りが軽くなるように,物体も自分の自然な場所が近づくにつれて,自然的傾向が強まって速度を増す。

2. 中世――古代知識の断絶と復活

3. 近世――科学革命

  • 科学革命はコペルニクスの『天球回転論』(1543年)~ニュートンの『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』(1687年)の約150年間

科学革命(1) 天文学

  • 古代の天文学理論(セントラル・ドグマ)(再掲)
    1. 天上と地上の区別
    2. 天球の存在
    3. 一様な円運動

コペルニクス

  • プトレマイオスの天動説の体系は3の「一様な円運動」を捨てている
  • コペルニクスは,宇宙の調和的秩序(コスモス)を回復しようとし,古代の天文学理論のうち2と3に忠実であろうとして1を捨てた
    • 伝統的な「一様な円運動」の魔力に深く囚われていたために,「天上と地上の区別」を捨てるという大胆な発想に至り,科学史上稀に見る革新を成し遂げた
    • プトレマイオスの体系では周転円が80個以上になっており計算が複雑だった一方,コペルニクスの説であれば暦作成などの計算が楽になるという実用性の面も,地動説の受容を促進していった

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ケプラー

  • コペルニクス固執していた「一様な円運動」と「天球の存在」のドグマを打ち破り,近代天文学への道を切り開いたのがヨハネス・ケプラー
  • 「一様な円運動」の否定

    • ケプラーは師のティコ・ブラーエから受け継いだ観測記録から火星の軌道を推定する作業に取り組み,以下の法則を発見した
      • 第1法則(楕円軌道の法則):惑星の軌道は真円ではなく楕円である
      • 第2法則(面積速度一定の法則):惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積(面積速度)は、一定である。
        →「円運動の一様性」を否定
      • 第3法則(調和の法則):惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する。太陽中心説を裏付けるとともに,宇宙の数学的秩序を発見
  • 「天球の存在」の否定

    • ケプラーは新プラトン主義に基づく神秘主義的側面を持っていた
    • 惑星の運動に作用を及ぼす「運動霊(anima motrix)」という概念を考えていた。
      • 運動霊が惑星に与える力は,太陽からの距離に反比例して弱くなるものとされた。
      • 運動霊の概念は,神秘的色彩を無くせば後の万有引力の概念への第一歩と言える概念であった。
    • ギルバートの『磁石論』(1600年)を読んで以降は運動霊の働き(今日における重力概念)を「磁力」によるものと考えていた
      →「天球の存在」の否定
  • ケプラーを契機として,天文学が「天体の幾何学」から「天体の物理学」へ転換していった

科学革命(2) 物理学・運動論と自然の数学化

「宇宙という書物は数学の言葉で書かれている」

  • 中世にピュリダンの「インペトゥス(impetus,勢い)理論」が運動論を前進させたが,インペトゥス理論もアリストテレス存在論を前提としている過渡的理論であり,真の意味で近代力学の礎を築いたのはガリレオである
  • ガリレオは運動論の革新を成し遂げただけでなく,自然観を質的なものから量的なものへと変えた。
    • 「宇宙という書物は数学の言葉で書かれている」というようなことを『偽金鑑識官』(1623年)で述べている。
    • この言葉は近代科学の方法論的マニフェストとでも言うべきもの。

ガリレオの運動論:物体の運動を数量的に定式化

  • ピサの斜塔の実験

    • ガリレオは実際には実験していない(斜塔での話は伝説にすぎない)が,思考実験(背理法による論駁)はしている。
      1. アリストテレスの見解(重いものは速く落下する)を仮定する。
      2. 仮に,重い物体は8の速度で,軽い物体は4の速度で落下するとする。
      3. 重い物体と軽い物体の2つの物体を結びつけて落下させてみる。すると,重い物体は減速され,軽い物体は加速されることによって,結合された物体は8と4の中間の速度で落下するはず。
      4. しかし,結合された物体は8+4=12の重さを持つため,8よりも速く落下しなければならない。ここに矛盾がある。
  • 落体の法則

    • ガリレオは物体の落下に関して,上記の論証だけでなく実験も行い(近代の実験科学の成立),落体の法則を発見した。
    • 第一法則:真空中ではすべての物体は同じ速度で落下する
    • 第二法則:自由落下する物体の落下速度は落下時間に比例し,落下距離は落下時間の二乗に比例する
  • 慣性の法則:すべての物体は外力が働かない限り,静止または等速直線運動を続ける

    • (現実には空気抵抗や摩擦があるため,等速直線運動を続けることはなく最終的には停止する)
      → 古代運動論のドグマ (1)「自然運動の原因は,自然な場所に戻ろうとする自然的傾向によるもの」は無用の概念となった
      物体を「四元素の性質」など「質的」な説明を行う時代から「量的」な説明を行なう時代に転換した
    • 投射運動も慣性の原理と落体の法則で説明できるため,古代運動論のアポリア(未解決だった難問)は解決された

ニュートン『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』

  • ニュートンは数学的自然科学の体系を完成させた
  • 『プリンキピア』ではユークリッドの『原論』に倣って,初めに定義と公理を掲げ,そららを基礎命題として定理(命題)を証明していくというスタイルをとっている

    • 基本法則として掲げたのは以下の3点
      • 第 1 法則(慣性の法則):すべての物体は、外力によって強制されない限り、静止の状態、または直線上の一様な運動の状態(等速直線運動)を続ける。
      • 第 2 法則(運動の法則):物体の運動(量)の変化は、作用する力の大きさに比例し、力の向きにおこる。  F = m a(力=慣性質量×加速度)
      • 第 3 法則(作用・反作用の法則):作用には反作用を伴い、2 物体相互の作用は常に大きさが等しく、逆向きである。
  • 第一遍「物体の運動について」の命題11において,「楕円軌道上を回転する物体が楕円の焦点へ向かう求心力(引力)は距離の二乗に反比例する」(逆二乗の法則)と述べた

    • 逆二乗の法則によって,ケプラーの第一法則と第二法則が導出可能であることが示されている
  • その後,あらゆる物体に引力があることを述べ,万有引力」を主張
    • 天上と地上が同じ物理法則に支配されていることを示した
      (リンゴが地に落ちるのも,月が地球に向かって引き寄せられた結果回転運動になるのも,同じく引力によるもの)
       → 古代天文学のドグマ「天地の区別」を打破
    • 引力という遠隔作用によって物体の強制運動が起こることを示した → 古代運動論のドグマ「強制運動の原因は接触による近接作用」を打破
    • プリンキピアの解説をするサイトもあるらしい: 楕円軌道の発見と万有引力の法則(「プリンキピア」の説明)

ここまでのまとめ

ざっくり絵にまとめるとわかりやすいかも,と思って自分用に作成したポンチ絵があるので載せます

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もっと詳しい話

このあたりの話は古典力学という領域に属するらしく,講義ノートを検索してみるとこのあたりの詳しい話を読むことができます。

例えば高知大学の津江保彦氏の「物理学概論Ⅰ」は序盤の方でケプラーガリレオニュートンが発見した法則を概説しています。

科学革命(3) 機械論的自然観

  • 科学革命の背景にあって近代科学の成立を促したのは,自然観の根本的転回
  • 古代・中世のアリストテレス的自然観は,宇宙全体を一つの有機体ないし生命体になぞらえるという点で「有機体的自然観」と呼ぶことができる
  • 科学革命によって「有機体的自然観」から「機械論的自然観」に転換した

    • 機械論:自然現象に代表される現象一般を、心や精神や意志、霊魂などの概念を用いずに、その部分の決定論的な因果関係のみ、特に古典力学的な因果連鎖のみで、解釈が可能であり、全体の振る舞の予測も可能、とする立場。
  • 古代のアリストテレス的自然観

    1. 古代ギリシャの「運動」概念は,「可能態」から「現実態」への移行であり,広範な概念であり,種子から樹木への成長で例えることができるようなもの
    2. 「等しきものをもって等しきものを知る」というアナロジー(類比)の方法を使う
      • → 運動など自然現象について考える際に有機体(生き物)をモデルにするのは当然
    3. アリストテレスの「質料形相論(hylēmorphismus)」:あらゆる個物は「質料(hyle)」と「形相(eidos)」が合成されたもの
      • 質料:無規定な素材・材料(=可能態)
      • 形相:材料を限定する「かたち」(=現実態)
      • あらゆる運動(自然現象)は可能体としての質料が現実態としての形相を目指すことで生じる,という考え。
  • 中世のスコラ哲学
    • アリストテレス的自然観を基本的に継承した上で,形相を事物の本質的性質(nature)を現すもの(「実体形相」)と偶然的性質を現すもの(「付帯的形相」)に分けた
    • 実体形相が質料と結合すると実体が生成され,分離すると消滅する,と考えた
    • 例えば人間なら,体が質料で,霊魂が実体形相
    • 物体も,人間における霊魂のように,それをそのものたらしめている「実体形相」が宿っており,それによって物体の運動が引き起こされたり,性質の変化が生じると考えた

デカルトの「物心二元論

  • 省察』の構成

    1. 方法的懐疑
      • 知識の確実な基盤を探求するため,既存のあらゆる知識を疑い,否定した
      • →「我思う,故に我あり(cogito ergo sum)」:疑っている私の存在だけは否定できない
      • 存在するために身体や空間的場所を必要とせず,「思惟する(疑う)」という活動のみで存在を保証されている「私」のあり方は「精神」
      • 「精神」は,その存在をいっさいの物質的なものに依存しない「思惟実体」である
    2. 神の存在証明
      • 神が最も完全な存在者であり,欺瞞者ではない → 観念の客観的実在性(ひいては外的世界の存在)の確保
    3. 「物体」の本性を確認
      • 例えば,蜜蝋は常温では硬いが,加熱すれば液体となる → 抽象化すると残るのは「延長を持ち,柔軟で,変化しやすいあるもの」
      • 「物体」の本性は「延長」であり,生命的なものや精神的なものを含まない「延長実体」である(「物心分離」)
  • 物心二元論

    • 「物体」と「精神」はその本性が明確に異なる2種類の実体(他のものに依存せずそれ自体として存在するもの)
    • 世界は「物」と「心」という2つの実体からなる(物心二元論

心身問題(mind-body problem)

  • 物心二元論では,精神(思惟実体)と身体(延長実体)はそれぞれ独立した実体
  • しかし,人間は肉体が損傷すれば痛みがストレスになり精神に影響を与えるし,精神的ストレスが胃腸の障害を引き起こすこともある。
    「心身結合」の事実はどのように説明されるべきなのか。
  • デカルトの説明:人間の体内をめぐる動物精気(血液の微細な粒子)が媒体となり,脳の松果腺で精神と身体とが接触する

    • では,延長を持たない非物質的な精神がどのようにして身体と接触しうるのか?
    • デカルトは説得的な説明をすることができなかった
  • 心身問題は,自然界から「心」や「感覚的性質」を排除し,現象を物体の機械的カニズムによって説明しようとした科学的自然観が抱え込んだアポリア(哲学的難題)

    • 現代の科学・哲学にとっても避けられない課題
    • 現代科学は生命や精神から神秘的色彩を払拭し,基本的には「物質一元論(唯物論)」へ歩みを進めた
    • 脳科学などの科学的知見を踏まえて「心身問題」を「心脳問題」として捉えなおそうとしている「心の哲学(philosophy of mind)」という現代哲学の一分野がある

4. 近代――第二次科学革命

科学の制度

  • 近代科学は17世紀の科学革命を通じて方法論が確立され,「知的制度」が整った。
    科学知識が蓄えられ,後世に引き継がれるためには,「知的制度」が「社会制度」に組み込まれる必要があった

  • 大学の起源は古代ギリシアにおいてプラトンが紀元前387年頃に建てた「アカデメイア(academeia)」

    • アカデメイアで教育された主な科目:算術,幾何学天文学音楽理論
      • これらは必修科目という意味で「マテーマタ(学ばれるべきもの)」と呼ばれていた。
      • 「マテーマタ」はピュタゴラス学派(「万物は数からなる」と考える学派)に由来し,「数学(mathematics)」に派生

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  • アリストテレスは「リュケイオン」という学園を創設
    • 「逍遥学派」と呼ばれる弟子たちと回廊を散歩しながら議論するスタイルを採った。
    • アリストテレス形而上学』では,学問が発達するためには人々が日々の生活に追われない時間的・経済的余裕,余暇(スコレー)が必要だと述べている。
      • ギリシア語「スコレー(schole)」は中世ヨーロッパにラテン語「スコラ(schola)」に
      • 「スコラ」はもとは「修道院の附属学校」を意味し,「スクール(school)」の語源

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  • 「ユニバーシティ」の名を冠した高等教育機関が成立したのは中世後期の12~13世紀ごろ
    • 「総合大学(university)」の語源はラテン語「universitas(組合,ギルド)」で,特に「学生と教師の共同体」の意味
    • 12~13世紀に最初に成立したのはボローニャ大学パリ大学
    • ヨーロッパ中世の大学は一般に4学部制
      • 下級学部(哲学部):リベラルアーツ(自由学芸)を中心とする学部
      • 上級学部(神学部,法学部,医学部から成る):裁判官や官僚,医師などの専門的職業の資格と結びついた学部

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リベラルアーツと機械技術

  • リベラルアーツliberal arts, 自由学芸,自由七科)

    • 古代ギリシャやローマにおいて,奴隷階級ではなく「自由人」である市民が人格形成するにふさわしい理性的学問という意味で「自由学芸」と呼ばれていたことから「自由」がつく
    • 三科:文法学,修辞学,論理学(弁証法
    • 四科:算術,幾何学天文学音楽理論
  • 機械技術(mechanical arts)

    • 職人階級(古代なら奴隷階級)の手仕事のことを指している。→ リベラルアーツの対となるのが機械技術
    • マイナスのイメージが強かった
      • プラトン『法律』では「市民は誰ひとりとして,職人の仕事に従事してはなりません」
    • 17~18世紀にプラスのイメージがつきはじめた
  • 「百科全書派」

    • 18世紀フランス啓蒙思想の中心にあった一派
    • 編纂した百科全書は『百科全書または学問,芸術,工芸の合理的辞典』と,学問(自由学芸)と技術や工芸(機械技術)を同列に並べている
    • しかし当時の大学はテクノロジーよりも自由学芸を重視し,教育に技術を取り入れることはしなかった
  • 高等教育機関への機械技術の導入

    • フランス革命後のフランスは,ヨーロッパ各国からの干渉戦争に立ち向かうために,軍事技術者を養成するための,大学とは異なる高等教育機関を作った
      → 1794年にパリに設立されたエコール・ポリテクニック(理工科専門学校)
    • ドイツでもこれに倣って高等工業専門学校(Technische Hochschule:TH)を設立

第二次科学革命:科学の制度化

  • 19世紀ヨーロッパにおいて,「第二次科学革命」あるいは「科学の制度化」と呼ばれる出来事が起こった
  • 科学者(scientist)と呼ばれる人が一つの社会階層として出現した
    • これ以前の科学研究は,専門的職業として行うものではなく,貴族や聖職者によって担われていた
    • 19世紀の半ばには,理工系の高等教育機関がヨーロッパ各地に建てられ,産業界でも企業内研究所を設立し始めた
  • 大学の改革も起こった:自然科学も取り入れ始めた
  • 「学会」も登場

5. 現代――「科学の危機」からの脱出

科学の危機(1) 数学の危機

  • 「数学の危機」を経て現代数学へと進化した

1. 非ユークリッド幾何学の発見と形式主義

  • ユークリッド幾何学ユークリッドが『原論』で置いた「平行線公準」が成立しない世界における幾何学
  • 当初,非ユークリッド幾何学は論理的可能性として存在する想像上の幾何学と考えられており,現実の三次元空間を記述するのはユークリッド幾何学だけだと考えられていた
  • ヒルベルト幾何学の基礎』は,非ユークリッド幾何学ユークリッド幾何学は同様に妥当な幾何学であることを明らかにした
    • 幾何学の公理(axiom)は我々の空間直観による自明の真理ではなく,任意の仮定あるいは規約であると考えた。
    • そして,公理の妥当性は,公理系の無矛盾性(互いに矛盾しないこと)や独立性(ある公理が残りの公理から導出できないこと)といった形式的な性格によって保証される,と主張した
    • ユークリッド幾何学も,その基本概念は現実の空間に対応物を持たなくても構わない。「点・直線・平面という代わりに,いつでもテーブル・椅子・ビールジョッキと言い換えることができなくてはならない」
      • このような立場を公理主義という。これにより幾何学は抽象数学のレベルへと上昇した。
      • ヒルベルトは公理主義を更に発展させ,数学は一定の規則に従って形成された数式の間の形式的な「式のゲーム」である,という考えに至った(形式主義
      • 20世紀の数学は形式主義の思想によって導かれていく

2. ラッセルのパラドックスと公理的集合論

  • 集合論で矛盾が発見された
  • ラッセルのパラドックス

    • すべての集合のうち,「自分自身を(要素として)含まない集合」をすべて集めた集合  R = \left \{x | x \notin x \right \} を考える
    •  R \in R(Rが自分自身を含む)を仮定すると,定義より R \notin Rとなる(「自分自身を含まない集合」の集合がRであるため,RはRの要素ではない)
    •  R \notin R(Rは自分自身を含まない)を仮定すると,定義より R \in Rとなる(「自分自身を含まない集合」の集合がRであるため,RはRの要素)
  • このパラドックスの解決に取り組む過程で「数学基礎論」という新たな学問分野が生まれた。

    • 数学基礎論:数学の基盤を論理学や哲学の観点から反省しようとする試み
    • このパラドックスに対しては,集合論の公理に一定の制限を加える(集合の作り方に制限を加える)ことで矛盾を排除
    • 現在では矛盾を含まない「公理的集合論」が構成されている
  • 参考

科学の危機(2) 物理学の危機

  • 物理学の危機:ニュートン力学など古典物理学の限界が明らかになり,現代物理学(相対性理論量子力学)が誕生した事態
  • 古典物理学をベースとした「力学的自然観」で解決できない難問
    1. 光の速度が一定であること
      • 当時は宇宙全体に充満しているエーテルという微細な物質を媒体として光が伝播すると考えており,光の速度は同じくエーテルの中を進む地球の公転速度の影響を受けると予想されていた。
      • マイケルソン・モーリーの実験(1887年)によって,光の速度は地球の公転速度の影響を受けないことが報告され,「では地球はエーテルの中で静止している(天動説)のか?」ということに
    2. 熱現象を支配しているエネルギーの均等分配の法則の妥当性が疑われた
      • 当時は原子や分子が力学法則に従うことを前提に気体の力学的理論を構築しており,エネルギーの均等分配の法則に行き着いた。
      • しかし,実験結果によって,熱現象を支配しているエネルギーの均等分配の法則の妥当性が疑われた

アインシュタインの「相対性理論

  • 相対性原理:物理法則は一定の速度で相対運動するすべての慣性系に対して同じ形をとる
    • (例:時速100kmの乗り物の中でボールを時速60kmで投げても,時速160kmの剛速球になるわけじゃない)
    • ニュートン力学が前提としていた「絶対運動」「絶対時間」「絶対空間」の概念が不要になった
  • 光速度不変の原理:光はどのような慣性系でも真空中を一定の速度で進む
    • エーテル」という概念が「真空」に変わった(エーテルの存在は否定した)
    • 上述の難問「1.光の速度が一定であること」が解決された

M. プランクの「量子仮説」

  • 古典力学:エネルギーなどの物理量は連続量と考える
  • 量子仮説:エネルギーなどの物理量は離散量と考える
    • 「エネルギーには最小単位があり,エネルギーはその最小単位の整数倍の値しかとらない」という仮説
  • 量子仮説によって上述の「2. エネルギーの均等分配の法則の妥当性が疑われた」が解決